伝統校で初の女子生徒会長、後ろ指をさされても、臆せず。斉藤由姫さん(AH25)

 女子の生徒会長は、男子生徒が圧倒的に多い工業高校でも誕生している。芝浦工業大学建築工学科4年の斉藤由姫さん(21)は、高2の秋から1年間、山梨県立甲府工業高校で生徒会長を務めた。1917年創立の同校で、女子の会長は初めてだつた。
小5の時、自宅のリフォームで、女性建築士の仕事ぶりを見たのがきつかけで、 工業高校に進学した。工業高校への進学に、両親や中学の先生は当初「普通高校に行つてから進路を考えればいいのではJと難色を示したが、建築を学びたいという思いは強かつた。
 高校は1学年280人で、女子生徒は全体の5~ 6パーセントほど(在校当時)。機械や土木などクラスの中で、女子の割合が最多だった建築のクラスでも、女子は40人中5人という「男社会」だつた。
小中学校時代 は内弁慶だったが、学校公開で案内してくれた生徒会の先輩に憧れ、1年生で実行委員に。同学年が数人しかおらず、2年生の時、推されて会長になつた。
「女子がトップに立つなんておかしい」。そんな声が、OBなどから学校にいくつか寄せられていたのを知ったのは、卒業してからだ。3年生の夏、甲子園の出場 経験が何度もある野球部が、夏の県大会で30年ぶりに初戦敗退。「生徒会長が女子だからだ」。そう言われた時は、さすがに関係ないでしょうと思ったが、「トップに立てば、何かといろいろ言われるのは仕方ないことかな、と思った」と振り返る。
 大学では、大学生協の活動で150人規模の学内組織をまとめ、 3年生からは首都圏 にある18大学の学生委員会を支援する役職にも就いている。
いま在籍する建築工学科も、女子は少数派。でも、斉藤さんは「高校での生徒会長の経験は、組織運営や、たくさんの男子の前でも臆することなく自分の意見を伝えることにとても役立っている」と話す。
「建築が好き。学校が好き。そういう思いに男女差はない。10代の女の子たちには、性別を意識せず、自分の中の『好き』を大切に、どんどん自分を出していってほしいです」
いずれは地元に戻り、建築設計競技に打ち込んだ高校時代の仲間たちと、県産材を活用した建物をつくりたい。そんな夢を描いている。資料;朝日新聞全国版