東京スカイツリー設計陣に土屋哲夫さん(勝沼町出身)再び甲州人の手で「内藤博士の意思」継承

 

世界一高い634メートルを目指して東京都墨田区で建設中の「東京スカイツリー」の設計に、甲州市勝沼町下岩崎出身の土屋哲夫さん(40)が携わっている。半世紀以上にわたり国内最高で、完成当時は世界一を誇った東京タワーの設計を手掛けた南アルプス市櫛形町出身の内藤多仲に続き、“最高峰”の建築に再び甲州人がかかわっている。新たなランドマーク建設で課題となった狭い敷地は、日本の伝統的な建築技術を応用した耐震性の強化でクリア。地面の三角形が次第に円形となる形状は先端ノウハウを生かした。「内藤多仲先生も当時、最新技術を駆使したと思う」という土屋さん。技術の粋を集めたこだわりは塔博士と同じだ。
 建設現場の約200メートル東にある墨田区押上の京成橋は、展望スポットとして平日でも混雑。見物客が写真撮影する姿を見ながら、土屋さんは「東京タワー(333メートル)を超えてからお客さんが増えたようだ。多くの人に見られるのは、うれしい」と目を細める。
 土屋さんは、駿台甲府高を卒業後、東京大学、同大学院に進学。東京タワーも手掛けた日建設計(本社、千代田区)に就職した。スカイツリーの設計には社員約20人が中心となってかかわり、土屋さんは建物の                                           
デザインや建物内部の仕様を手掛ける意匠設計チームのリーダーになった。(設計の思い出を語る土屋哲夫さん) 高さ634メートルの計画に対する最初の印象は「本当に立つのか」だった。超高層建築物は通常、底辺と高さの割合が「1対5」程度とされるが、建設予定地(約3万7千平方メートル)が細長い地形のため底辺は68メートルで、割合は「1対9」という厳しい条件だった。
 耐震性を増すため地下約50メートルまで支えのコンクリートを埋め込んだほか、建物の中心に柱のように立つコンクリート製の構造物を、鉄骨パイプが覆う二重構造にした。中心の「心柱」と周囲の梁(はり)などで成り立つ法隆寺五重塔の工法を応用し、中心部と周囲が異なる揺れをすることで、大きな地震にも対応できるような仕組みにした。
 デザインにも趣向を凝らした。タワーの断面は地面が「最も安定感がある」三角形で、高くなるに連れて丸みを帯び、最後は完全な円形となる。日本刀のそりなどをイメージした鉄骨パイプを組み合わせることで特殊な形状を実現。「工事をする人は大変だが、最初から造りやすい形では面白くない」とこだわりを見せる。
 日建設計が内藤多仲と協力して設計した東京タワーの図面も見たという。「内藤先生はわたしにとって教科書の中の人物。意識することはなかった」と振り返るが、「東京タワーもスカイツリーと同じように最新技術を駆使したと思う。その点では内藤先生と同じかもしれない」と話す。なお、高さ634mは「武蔵」と覚えやすい。